〜茶花歳時記〜


     々が語る 節の報せ  茶 と共に日本の 承を次の世代へ…  




 新企画『茶花歳時記』がスタートしました。
 1年の予定でお届けするこのコーナーは、茶花を愛でる方々とのコミュニケーションを目的としています。
 季節ごと、暦ごとに咲きそろう花々の歳時記について語る前に、茶花の規則について確認してみましょう。


茶花としてふさわしくない花
禁花について…




花入に 入れさる花は ちんちゃうけ

太山しきみに けいとうの花 女郎花 さくろ かうほね

金銭花 せんれい花をも 嫌也けり



 匂いのある花、棘のある花、実のある花、食用にする花、外来種の花。
 これらは茶の湯の茶花としてふさわしくない花材に挙げられていますが、実のある花であっても、ほおずきや烏瓜などは認められています。
 それらの例外はどうして認められるのかを考えながら、茶花の禁花について、まずはじめに考えてみましょう。
 『南方録』という覚書の中に、上記にご紹介したような狂歌が記されており、茶花にふさわしくない花の数々が詠われています。
 以下にご紹介する花は、この狂歌の中に詠み込まれた花や、禁花とされる花ばかりですが、これらの花を例に挙げて何が茶花としてふさわしくあり、ふさわしくないのかを確かめてみましょう。

   沈丁花  太山樒   鶏頭   女郎花   柘榴   河骨
   金銭花   せんれい花   匂いのある花   棘のある花
   実のある花   食用にする花    外来種の花   朝顔

沈丁花
 ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属 常緑低木
 別名を瑞香という。英語名はウインター・ダフネ。
 原産地は中国とヒマラヤ地方。
 沈丁花が茶花にふさわしくない理由としては、沈丁花特有の香りの強さが挙げられます。
 一般的に沈丁花の香りは、金木犀と並んで人々を魅了する長所ともいうべきものなのですが、茶の湯においてはこの香りが邪魔になってしまうのです。
 茶の湯において焚きしめるお香の香りが、この花の強い香りに紛らわされてしまうから、というのが、沈丁花が禁花として選ばれてしまった不本意な理由です。
太山樒
 モクレン科シキミ属 常緑小高木
 別名を香芝、花榊、花芝という。学名はイリキウム・アニサツム。
 原産地は関東から沖縄と中国南部、インドシナ、北アメリカ東南部。
 太山樒が茶花にふさわしくない理由としては、やはり抹香や線香の材料にもなる特有の香りと毒性の強さが挙げられます。
 それに加えて、樒の花には季節がありませんし、茶花としての見どころもないと考えられています。
鶏頭
 ヒユ科ケイトウ属 1年草、2年草
 別名を唐藍、鶏冠花という。英語名はコックスコーム。
 原産地は熱帯アジアとインド。
 鶏頭が茶花にふさわしくない理由としては、あまりにも似すぎている雄鶏のトサカ形が茶花にふさわしくないとされています。
 また、色彩が茶花としてふさわしくない原色じみているということも、その理由といえます。
女郎花
 オミナエシ科オミナエシ属 多年草
 別名を粟花という。学名はパトリニア・スカビオシフォリア。
 原産地は日本と東アジア。
 女郎花は秋の七草に数えられる名花ですが、茶花にふさわしくない理由としては、特有の香しくない臭いの強さが挙げられます。
 しかし、女郎花は禁花として列挙されているにもかかわらず、茶の湯の席に飾られることが少なくありません。
 例外として考えられています。
柘榴
 ザクロ科ザクロ属 落葉低木
 別名を色玉という。学名はプニカ・グラナツム。
 原産地はペルシアとアフガニスタン、インド西北部。
 柘榴は実のなる花ということで禁花とされ、茶花としても見所がないという理由からも禁花と考えられています。
 しかし、柘榴は決して使用してはならないとも言い切れず、事実、現代ではしばしば用いられますし、古い文献にも白柘榴の花が茶花として用いられたという 記録が残されています。
河骨
 スイレン科コウホネ属 多年草
 別名を骨蓬という。学名はヌファル・ヤポニクム。
 原産地は日本と中国。
 河骨が茶花にふさわしくない理由としては、その骨という名前が忌まれたと考えられています。
 しかし、河骨の花や形状は、茶の湯の席に決して悪くは映らず、あの千利休でさえも河骨を好んで用いたということです。
 河骨という花姿に似つかわしくない名前は、地下茎が魚の骨に似ているところから由来しているもので、河骨の花にとっては迷惑な名前といえます。
金銭花
 キク科キンセンカ属 1年草、多年草
 別名を黄金草、唐金盞という。英語名はポット・マリーゴールド。
 原産地は南ヨーロッパ。
 金銭花が茶花にふさわしくない理由としては、金銭という名が影響しているように思えますが、それよりもむしろ季節を問わず咲き続ける時無しの花 という点が嫌われた理由として考えられています。
 金銭花はもともと仏花として用いられていた花で、茶の湯の花としてふさわしく思えないというのも、ひとつの理由になっています。
せんれい花
 ?科?属
 せんれい花という花がいったいどんな花であるのか、はっきりとしたことは分かっておらず、鮮麗花という言葉の意味になぞらえて、 派手な花、と考えられています。
匂いのある花
 香の香りを打ち消すような香りの強い花は、一般的に茶花としてふさわしくないと考えられています。
 香りを持っていても茶花として許されるのは、水仙や浜梨など、やさしいものに限られるようです。
棘のある花
 棘や針のある花はもともと仏花として用いる花であるところから、茶花としてふさわしくありませんが、木瓜や目木、浜梨などは例外として考えられています。
 茶花としてふさわしい形のものは針がある場合でも用いるということで、そういった場合には事前に取り払って活けるという考慮が必要になります。
実のある花
 実のなる花の中で例外として用いられるのは、ほおずき、秋茄子、烏瓜、あけびなどで、季節の風情を感じさせ、 野趣に富み、秋の名残りの花としてふさわしいものなどです。
食用にする花
 食用の花の中で茶花に用いられるのは、蕗のとう、ふくべ、南瓜など、やはり季節感を如実に表現する名残りの花は好まれます。
外来種の花
 茶の湯の花としては、やはり古来から日本に伝わる和花を用いたいものですが、現代ではそうとばかりもいえません。
 例えば、時計草という花がよい例で、南国特有の原色が茶の湯にふさわしくないという理由から以前は使用されることがありませんでしたが、 最近では、必ず正午に花を咲かせるという面白い花として、洋花でありながらも茶の湯の席でもしばしば見かけられるようになりました。
 同じく蔓ものの鉄線と同様に、親しまれています。
朝顔
 ヒルガオ科アサガオ属 1年草
 別名を牽牛花という。英語名はジャパニーズ・モーニング・グローリー。
 原産地は熱帯アジア。
 朝顔は、決して禁花として数えられているわけではありませんが、千利休が死を覚悟して催した茶会にこの花を使用して秀吉を感服させた故事から、 その優れた心意気や勇気に遠慮して、茶の湯では使用しないという暗黙の了解のようなものがあります。
 もちろん、使用してはいけないという厳密な約束はありませんから、しばしば見かけることもあるのですが、そういった場合には見解の相違といったところで、 利休居士への追慕の念がそうさせていると考えるのが無難かと思われます。